イメージング質量分析(IMS)は、現在もっとも活発に開発および応用されている分野の一つです。特に薬物動態をはじめとする医療分野への応用研究は、IMS開発初期から行われていましたが、機器の進歩や前処理法の進歩により、現在ではかつて想像できなかったようなデータを取得することが可能になりつつあります。

 代表者は、特に国立がん研究センターにおいて医師主導治験でIMSを応用してきた経験があリます。この経験より、ヒトモデル組織を用いて薬物動態評価が可能になれば、患者の方々への苦痛を軽減しつつ新規薬物動態評価系が構築出来ると考え、大阪大学知の共創プロジェクトへ「ヒト3次元生体組織モデルにおける高解像度薬物動態可視化システムの開発」を申請し採択されました。

 本プロジェクトは、ヒト3次元モデル試料を作製可能な研究者、異なるイオン源でIMSを行う研究者、得られた薬物動態を評価する医師より構成された異分野融合チームで進められています。

このプロジェクトでは、本年度中に枠組みを構築し、将来のニーズを調査したいと考えています。

 このような背景から、この公開シンポジウムを開催するに至りました。既に述べたように、IMSは様々な応用研究者が興味を持つ分野です。様々な学会に所属する研究者の皆様にとって大きなメリットがあると考えています。

 本シンポジウムでは海外より2名の基調講演者を招へい予定です。1名はIMSの黎明期から積極的に開発に携わっており非常に著名なRon M Heeren (マーストリヒト大学)です。Heeren Labでは一つの施設に、医師、エンジニア、科学者が集結し、日々新たなIMS法の開発およびIMS法を用いた診断方法を研究しています。

 もう1名はデータ解析で著名なDennis Trade(SCiLS)です。日々、IMSのデータサイズは大きくなり、その処理方法は非常に重要な課題として認識されています。SCiLS社では、新たなソフトウェアを開発しており、今後のデータ解析の方向性について非常に重要な知見を与えてくれると期待しています。

 さらに、国内からの演者として本プロジェクトに参加している代表者の新間、3次元モデル組織構築で著名な松崎典弥、SPESIイメージングで著名な大塚洋一、および医学研究科の今野雅充、その他国内のイメージング研究者ならびに3次元モデル組織構築分野の研究者に講演をいただく予定です。

 このようなコンセプトを基にしたイメージング質量分析に関するシンポジウムは日本では初めてだと思います。様々な分野の研究者、技術者に参加していただき異分野融合の場を提供したいと考えています。


大阪大学 知の共創プログラム 代表 
新間秀一